Tuesday, February 9, 2010

マラソンブームに一石を


日本経済新聞 2009年11月26日夕刊15面「うたた寝」

マラソンブームに一石を

「人と競うよりもっと感動することはあるはず」。
世界72ヶ国、565のマラソン大会を走ってきた市民ランナーの西一さん(60)が、ユニークな環境マラソン大会を千葉県で実現させようと奔走している。走り始めたのは41歳、妻の死がきっかけだった。「仕事を口実に看病から逃げ出した自分が許せなかった」。虚無のふちから救ってくれたのがマラソンだ。全財産を売り払い、世界各地の大会を回った。だが、ただ他人より速く走ろうとして、ボランティアに感謝することなく、ゴミをまき散らす多くのランナーや、それを容認する大会運営に幻滅。世界各地の大会の様々なやり方を観察しながら、エコロジーとマラソンを組み合わせた「エコマラソン」を自ら提唱。独自の基準で大会を格付けした本を自主出版した。
 
2011年春開催を予定しているのが「エコマラソン印旛(エコインバ)」だ。場所は里山など豊かな自然が残る印旛沼。運営方法はその多くが既成の大会を反面教師にしている。26ヶ所に設けられる給水所では紙コップを全廃。ランナーは持参したマイカップ、マイ水筒で給水タンクから取水する。コース内でゴミを落とし、指摘されても拾わなかった場合は失格。会場への交通は公共交通機関や自転車を義務づけ、車での来場は禁止だ。達成感を味わってもらうため、制限時間は破格の9時間。最大の特徴はタイム計測をしないことだ。終了後、表彰されるのはゴミ拾いに奮闘したり、道中ほほえましい写真を撮った人たち。ランナー同士の交流も重視しており、1000人の定員のうち半数は外国人と想定、海外への発信も続けている。     (編集委員 芦田富雄)

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